中耳炎の診断と治療


Q中耳炎とはどんな病気ですか?

 風邪ひきのあと、上咽頭から耳管(一口メモ)を経て細菌感染が中耳に波及することによって発症するのが中耳炎です。 (よく俗に耳に水が入ると中耳炎になるといいますが、まったくのウソです。 鼓膜があるかぎり水が入っても大丈夫です。) 急性中耳炎の典型的な症状は耳痛、耳閉感、耳鳴、難聴、発熱、耳漏などです。 風邪のあと急に起こる耳痛で、耳たぶをひっぱっても痛みが増強しない時は急性中耳炎と考えてもいいでしょう。 (耳たぶをひっぱったら痛みが強くなる場合は外耳炎のことが多いようです。) 急性中耳炎は小児に多く見られます。 小児の耳管が水平に近く、また相対的に太いので細菌が上咽頭から中耳に侵入しやすいのです。 

Q慢性中耳炎とはどんな病気ですか?

 多くは小児期にかかった急性中耳炎が完全に治りきらないままで引きずってきた状態ですが、急性中耳炎が3カ月経っても治らないときは慢性中耳炎と呼びます。 症状は耳漏と難聴です。 痛みはほとんどの場合ありません。 特殊な慢性中耳炎として、真珠腫性中耳炎がありますが、この場合の耳漏はたいてい悪臭があり、血性耳漏を認める場合もあり、また耳痛を認める場合もあります。 真珠腫性中耳炎は進行するとめまいとか顔面神経麻痺さらには髄膜炎を起こす場合があります。 

Q中耳炎の診断は?

 急性・慢性とも問診でほとんどの場合診断がつきます。 視診と検査は診断を確定するのに有用です。 視診では鼓膜の状態を直接みて診断を行います。 急性中耳炎の場合には (下図左) 鼓膜の発赤を認めることが特徴的です。 鼓膜自体の膨隆があることもあります。 すでに耳漏がある場合には鼓膜より排膿しているのを認めます。 慢性中耳炎の場合には (下図中央) 発赤はなく、鼓膜穿孔(鼓膜緊張部に認められる)が顕著で、排膿を認める場合もあります。 真珠腫性中耳炎の場合は普通の慢性中耳炎と違って鼓膜の上の方(鼓膜弛緩部)に穿孔があり、真珠腫という白い固まりを認めます (下図右) 。 一般的に中耳炎では標準純音聴力検査(一口メモ)で、骨導聴力はほぼ正常ですが気導聴力が悪くなる伝音難聴(一口メモ)を呈します。 進行した場合には骨導聴力も悪くなり混合性難聴という状態を呈することもよくあります。 

             

Q中耳炎の治療は?

 急性中耳炎は、抗生剤の内服投与で一週間以内にほぼ全快します。 しかしながら、細菌の菌力が強い場合、抗生剤に対して抵抗性(薬剤耐性)をもっている場合、局所あるいは全身状態が悪い場合には、急性中耳炎が慢性中耳炎に移行することがあります。 慢性の場合も同じく抗生剤の投与を行います。 局所の治療で穿孔を閉鎖させるようにします。 耳漏が止まれば治癒したと考えられがちですが、実は治ってはいないことに注意する必要性があります。 すなわち、鼓膜穿孔が残っていることが多いのです。 鼓膜穿孔があると再々感染をおこして耳漏排出が再々起こります。 耳漏排出を繰り返していると感染が中耳から内耳に及んで感音難聴(一口メモ)を起こし(骨導聴力が悪くなる)混合性難聴となり、聴力の回復がだんだん難しくなっていきます。 そうならない前にきっちりした治療(手術)が必要になります。 

Q中耳炎の手術は必要ですか? 

 慢性中耳炎は基本的には手術治療(鼓室形成術)が必要です。 耳の中を掃除して、音を伝える耳小骨の連鎖(一口メモ)を良くして、鼓膜を張る手術です。 普通の慢性中耳炎は手術をしなくても命には関わりありませんので、そういう意味では必ずしも手術は必要ありません。 時々耳だれが出て聴こえが悪くなるなるだけです。 きっちり治そうと思う場合は手術を受けて下さい。 
 必ず手術が必要になるのは真珠腫性中耳炎です。 真珠腫性中耳炎は先にも述べたように進行する病気で、真珠腫がどんどん周囲の組織、すなわち骨組織を破壊して、内耳の半規管に及べばめまいを起こしますし、耳のすぐそばを走っている顔面神経に及べば顔面神経麻痺を起こします。 また耳のすぐ上、頭蓋底に及べば髄膜炎などを起こし、命に関わってくることがあるので、真珠腫を取り除く必要があります。 しかしながら、この真珠腫性中耳炎はやっかいなことに手術をしても再発することが多いのです。 せっかく手術をしたのに何年かしてまた真珠腫が再発して再手術をしなければならないことも珍しくありません。 そのため真珠腫の手術では最初の手術では、真珠腫を完全に取り除き、一年あるいは二年後に再手術をして真珠腫の再発がないことを確かめた上で、耳小骨連鎖を良くして音が聞こえるようにする手術をするという、二段階手術を行うことも珍しくありません。 


■一口メモ

耳管

 上咽頭から中耳まで通じている管です。 普段は閉鎖していますが、あくびや嚥下や大きく口を開けると開きます。 中耳炎はこの耳管を通して細菌が感染することで発生します。

標準純音聴力検査

 耳にレシーバをあてて聞き取るのを気導聴力検査といいます。 耳の後ろの硬い骨(乳様突起)にレシーバをあてて聞き取るのを骨導聴力検査といいます。 この両方の検査を周波数125ヘルツから倍々で8000ヘルツまでの純音で行い、聴力を調べるのが標準純音聴力検査です。 骨導聴力検査と気道聴力検査を組み合わせて行うことにより、その難聴が伝音難聴であるか感音難聴であるか、あるいはこの二つの合わさった混合性難聴であるかを診断することが出来ます。

伝音難聴・感音難聴

 鼓膜から三つの耳小骨のアブミ骨までのあいだに障害があって難聴の原因になっている場合を伝音難聴といいます。 中耳炎はこれにあてはまり、伝音難聴となります。 一方、内耳から大脳皮質までの間に障害があって難聴の原因になっている場合を、感音難聴といいます。 この場合は難聴を治すことは一二の例外を除いて不可能です。 内耳炎、老人性難聴、騒音性難聴、突発性難聴、メニエール病などは感音難聴です。

耳小骨の連鎖

 音は鼓膜までは、空気中を空気の振動として伝わってきます。 内耳で、実際に音を感じ取りますが、この内耳では音は液体(リンパ液)の振動として伝わります。 「空気」と「液体」と全く異なる「振動の媒体」を結びつける役割をしているのが耳小骨というもので、三つある耳小骨の音の伝わりを耳小骨連鎖といいます。 この様に、固体の振動が空気振動と液体振動を結びつけているのです。 三つの耳小骨は鼓膜側から順番にそれぞれツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨といい、その形にちなんで名前が付けられています (下図) 。


「まいんどクリニック」より へ戻る 

大阪労災病院耳鼻咽喉科 へ戻る