突発性難聴の診断と治療


Q突発性難聴とは?

 ある日突然に、片方の耳が聴こえなくなる耳の病気です。 この病気の原因や本態は未だに不明です。 この突発性難聴の難聴の型は感音難聴(一口メモ)です。 一般的に感音難聴は治癒困難ですが、この突発性難聴はしっかりした対応をすることによって治すことが可能です。 臨床的には「ストレス」「疲労」が誘因になっている事例が多いようです。

 

Q突発性難聴の症状は?

 急にどちらかの耳に難聴が生じます。 その難聴の程度は、急に聴こえにくくなったと自覚する程度の難聴、すなわち中程度から高度の難聴です。 したがって、難聴を自覚した「日時」を憶えているほどのはっきりした程度の聴こえの悪さを自覚する人が大部分です。

 難聴になった側の耳で耳鳴り症状がたいていの場合出現します。 まためまい症状を訴える人がおよそ3割程度あります。 このめまいは、回転性のこともあり動揺感だけのこともありますが、突発性難聴に伴うめまいは、一般的にその場限りの一過性で、メニエール病(一口メモ)のように繰り返すことはありません。

Q診断はどのように行いますか?

 はっきりした突然の難聴があれば診断は容易です。 耳の視診で、外耳道に閉塞がなく、鼓膜にまったく異常が認められず、聴力検査で片方の耳の感音難聴が同定できれば、まずこの疾患が疑われます。 前述の随伴症状としての耳鳴りやめまいの有無もチェックすることが大切です。 めまいがひどい場合は、眼振(めまいに伴う、眼球の不随意的な規則正しい往復性の回転運動)を認めることもありますが、急性期のみに限られます。

Q治療は入院が必要ですか?


 突発性難聴を治すためには、早期安静入院が重要です。 治療するうえで大切なことは、何よりまず安静であり、必ず早く入院して治療を受け始めることです。 少なくとも2週間以内、できれば1週間以内、一日でも早く治療しなければなりません。

 突発性難聴は、治癒することが可能な数少ない感音難聴ですが、治療が遅れるとせっかくの治る病気も治らなくなります。 事実、早期の安静入院を逃すと、後になって入院してもほとんどの場合は手遅れ状態に陥っており、早期入院と同じ治療を行っても治療効果が殆どない結果となっています。

Q入院中の治療方法は?

 普通は、ステロイド・ホルモンの漸減療法低分子デキストランなどの点滴と組み合わせて行います。 ビタミン溶液、ATP製剤溶液なども同時に点滴を行います。 ステロイドで聴力の回復が思わしくない場合は、デフィブラーゼ(一口メモ)療法に切り替えます。 この薬剤は副作用があるので使用をためらう医師もいますが、基礎疾患に血液疾患があるなど、よほどのことがない限り重篤な副作用はありませんので、安心して使えますし、難聴の回復にも有効です。 

 補助療法・併用療法として高気圧酸素療法星状神経節ブロック(一口メモ)があります。 ただし星状神経節ブロックはデフィブラーゼ療法と併用することはしません。

 ステロイド治療により血糖値が上昇し、糖尿病が急性増悪することがあるので、糖尿病と言われた、あるいは糖尿病治療を受けている場合には、内科の医師による血糖値のコントロールを同時に行うことが大切です。 

Q予後を左右する因子は?

 1. 入院安静治療を行う
  2. 発症から治療開始までの期間が短い
  3. 感音難聴の程度が軽い
  4. めまいを伴っていない

 などの場合には治療の予後が良く、これらの反対である場合には、予後が良くないことが明らかとなっています。

Q鑑別すべき疾患は、どのような病気がありますか?

 メニエール病ウイルス性内耳炎(一口メモ)心因性難聴などの疾患との鑑別が必要ですが、聴力検査、ウイルス抗体価検査などや身体症状などにより鑑別を行うことがある程度可能です。


■ 一口メモ

□感音難聴:外耳道や鼓膜、耳小骨に異常がなく、内耳から大脳皮質までのあいだに障害があって生じる難聴をいいます。 老人性難聴、騒音性難聴、内耳炎などは感音性難聴ですが、これらの疾患の難聴は治ることはありません。 外耳道・鼓膜・耳小骨に障害があって生じる難聴は伝音難聴といいます(下図参照)。

□メニエール病:めまい、難聴、耳鳴りの三主徴を発作的に繰り返す内耳の病気です。 病気の本態は、内リンパ水腫といって、内耳の内リンパ系にある内リンパ液が発作的に増加する病態です。

□デフィブラーゼ:血中のフィブリノーゲン(血液の止血・凝固に関わる血液成分)を特異的に低下させる作用があり、血流を改善効果があります。 この薬剤を連続使用すると出血傾向(止血しにくくなる状態)を来しやすくなりますが、難聴の回復に有効な治療薬剤ということができます。

□高気圧酸素療法:密閉タンク内を徐々に加圧し、二気圧にして酸素吸入を約一時間行い、また徐々に減圧させる治療法です。 

□星状神経節ブロック:頸部の第7頸椎横突起上にある星状神経節と云う交感神経節を局所麻酔薬でブロックする療法です。 ブロック側の頭部・顔面の血流が増加します。

□ウイルス性内耳炎:おたふくかぜは随伴症として感音難聴を引き起こすことがあります。 この場合は治癒は望めません。 ハント症候群はヘルペス・ウイルスによる疾患で、感音難聴の他にめまいや顔面神経麻痺を引き起こすこともあります。


「まいんどクリニック」より へ戻る 

大阪労災病院耳鼻咽喉科 へ戻る