産経新聞 2008年1月28日(月) 生活面25頁
突発性難聴
大阪労災病院耳鼻咽喉科部長 奧村新一氏に聞く

  

 歌手の浜崎あゆみさんがブログで、左耳の聴力が失われたことを告白した。ファンだけでなく多くの人々が衝撃を受けたが、今後も音楽活動を続けていく決意を表明している。原因とされる「突発性難聴」とはどんな病気なのか。数多くの症例をみてきた奧村新一・大阪労災病院耳鼻咽喉科部長に聞いた。(伐栗恵子)

突発性難聴

 突発性難聴は通常片方の耳が、あるとき突然に聞こえなくなる病気で、耳鳴りやめまいを伴うことも多い。「聴力低下が急激なので、患者さまは難聴を自覚したときを『何月何日何時ごろ』とはっきり覚えている人がほとんどです」と奥村部長は指摘する。

 パーキンソン病などと並んで厚生労働省が「特定疾患」に指定する123の難病のうちの一つで、全国の患者さまの数(推計)は平成5年に年間約2万4000人だったが、13年には約3万5000人に増加。この傾向は続いているという。

 しかし、原因は分かっておらず、ウイルス感染説や耳の奥にある内耳の血管のけいれんや血栓、出血などによる循環障害説、アレルギー説などがある。「ストレスが引き金になるとも指摘されていますが、ストレスがない人にも発症しており、いつでも誰にでも起こり得る病気です」と奥村部長。まれに再発するケースやもう片方の耳に発症するケースもあるという。

 難聴には、内耳やそれより中枢に障害があって起きる感音難聴と、外耳や中耳に障害があって生じる伝音難聴があり、突発性難聴は感音難聴の一つ。「一般的に感音難聴は治りませんが、突発性難聴は唯一治る可能性がある感音難聴」(奥村部長)だ。

 ところが、トンネルに入ったときなどに耳が詰まったような感覚になる耳管狭窄と勘違いして、「そのうち治るだろう」と放置する人が少なくないという。「症状が固定してしまってからでは、治療の効果はほとんど望めません。突発性難聴は何よりも早期治療が重要です」

 同病院で平成17年1月から19年3月までに入院加療した真正の突発性難聴(再発例と低音障害型を除く)の390症例を分析すると、発症後12日以内に治療を開始した症例では、それより遅い症例に比べて治癒率は有意に高く、発症から治療開始までの時期が早ければ早いほど治療成績が良好なのは明らかだ。

 治療はステロイドの使用が一般的で、同病院では、血液の粘り気に関わるフィブリノーゲンを低下させ、血流を改善させる効果がある薬剤「デフィブラーゼ」を用いる療法も実施。また、補助療法として血液中の酸素濃度を上げて弱っている内耳の機能を高める高気圧酸素療法も行っている。

 奥村部長は「治る可能性のある病気なのだから、突然聞こえにくくなったと思ったら、とにかく1日でも早く専門医にかかってほしい」と話している。

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