聴こえと音の知識

   聴こえる範囲         
   聴こえの仕組み        
   出せる範囲          
   音を出す仕組み        
   騒音性難聴・c5ディップ 


 ものが振動すればが出ます。 音源が振動すれば周りの空気の圧力も変動します。 この圧力の変動が音波(sound wave)です。 毎秒あたりの振動数が音の周波数(frequency)で、ヘルツ(Herz)(Hz)で表されます。 音の高低は周波数によって決まります。 振動の大きさで音の大きさが決まり、その大きさはデシベル(decibel)(dB)で表されます。 また音圧(sound pressure)はパスカル(Pa)で表されます。 

 音は空気を媒介として疎密波のかたちで伝わります。 したがって空気のないところ(真空)、例えば宇宙空間では音は伝わりませんし、もちろん聴こえるわけがありません。 なのに何故かスターウオーズなどのSF映画では宇宙船のエンジンの発する音とか兵器の発する音が描写されます。 話が横道にそれましたが、というのは空気の振動を表す物理現象と、この振動が私達の鼓膜に達したときの脳の反応の両方を指す言葉なのです。

 その音ですが、ヒトあるいはその他の動物はそれぞれ音の周波数の聴こえる範囲と、出せる範囲が決まっています。 ヒトは一応20Hzから20,000Hzまで聴こえることになっています。 「一応、なっています」というのは、歳をとってくると、高い音からだんだん聴こえなくなってくる(老人性難聴 presbycusis )からです。 聴力の一番良い18歳くらいなら20,000Hzまで聴こえるかもしれませんが70歳80歳になれば8,000Hzが聴こえればいい方でしょう。 もっともこれは個人差に依るところが大きいのです。 いくら年をとってもよく聴こえる人ももちろんいます。

外耳道 鼓膜 鼓室の耳小骨 内耳の蝸牛

 では、音の聴こえの仕組みはヒトではどうなっているのでしょうか。 耳の孔から鼓膜に達した音は、三つの耳小骨ツチ骨キヌタ骨アブミ骨)に伝わります。 空気の振動であった音は鼓膜と耳小骨という固体の振動に置き換わります。 そしてさらにアブミ骨内耳前庭階外リンパ液という液体を振動させるのです。 つまり空気の振動液体の振動に置き換わったことになるのです。 

 普通、(空気の振動)は水面で殆ど全部はねかえされ、そのまま水中に伝わることはありません。 よく池の鯉を拍手して呼び寄せるというのがありますが、あれは拍手の音が鯉に聞こえているわけではありません。 視覚などでの学習機能?が働いて鯉が集まってくるだけなのです。 鼓膜と耳小骨空気の振動を液体の振動に置き換えるという、大事な働きをしているのです。 これをインピーダンス・マッチングといいます。

          

上左図  鼓膜に音が伝わり耳小骨の振動は内耳前庭窓から前庭階外リンパ液の振動へ。

上中央図 矢印 前庭階 矢印 鼓室階 あいだの三角部分が蝸牛菅コルチ器です。

上右図  コルチ器 青色は蓋膜 有毛細胞基底膜に載っています。 

 前庭階外リンパ液の振動は蝸牛の頂点まで行き鼓室階を伝って戻ってきて、正円窓まで達します。 その間、固有周波数に応じて基底膜を振動させ、その上に載っているコルチ器を振動させますが、コルチ器の外有毛細胞内有毛細胞の「」が硬い蓋膜にひっついているので、「」が変位させられ、有毛細胞に神経インパルスが生じ、そのインパルスはラセン神経節を経てさらに、蝸牛神経を伝って、最終的には大脳皮質にまで伝わるのです。 コルチ器蓋膜は、外リンパのある前庭階や鼓室階とは隔てられた「内リンパ液」で満たされた蝸牛菅というところにあります。 コルチ器音を感じ取る部位は周波数によってその場所が決まっています。 蝸牛(かたつむり)の先っぽの方では低い周波数(20Hz〜)、下の方(基礎回転部)では高い周波数(〜20,000Hz)を感じ取るようになっています。  

 逆に、出せる範囲はどうでしょうか。 もちろん男女差、個人差がありますがひっくるめて80Hzから1,100Hzがその範囲です。 バスで80Hz-300Hz、バリトンで110Hz-390Hz、テノールで150Hz-470Hz、アルトで200Hz-700Hz、ソプラノで260Hz-1,100Hzです。 

白線は食べ物・飲み物の通り道、黒線は呼気・吸気の通り道

 音を出す仕組みは、ヒトでは「発声」「発語」の仕組みです。 先ず、喉頭の左右の声帯がピッチリ閉じたところを突き破って呼気が出ることにより、「原音」が作られます。 その原音を咽頭口唇軟口蓋鼻腔などで加工して「」と「言葉」が作り出されるのです。 ヒトでは声帯のある喉頭は鼻とか口腔・軟口蓋から離れた位置にあるので、その間の咽頭や鼻腔が共鳴腔として役に立ち、声を作ることができるのですが、食べ物や飲み物喉頭さらにはそれに続く気管に入ってしまうという(誤嚥の)危険があるのです。

 ウマでは原音を作る喉頭の喉頭蓋が鼻の後ろに(後鼻孔に)ピッタリとひっついているので、誤嚥の心配はありませんが、発声は不可能なのです。 いななくだけなのです。 またヒトのように口で息はできません。

ウマの頭部の縦断面 矢印は呼気・吸気の通り道 

喉頭蓋後鼻孔にピッタリとついています

 下に代表的な動物の音の聴こえる範囲と出せる範囲を一覧にしておきます。 コウモリは超音波を発しながら飛び、障害物に反射して帰ってきた音を聴くことができるので、いわばレーダーを使っているみたいなものですから、真っ暗闇でも飛ぶことが出来るのです。 イルカにも同じ様なことが言えます。

        動物      聴こえる範囲        出せる範囲

        イヌ      15 -  50,000Hz        450 -   1,100Hz
        カエル     50 -  10,000Hz     50 -   8,000Hz
        ネコ      60 -  65,000Hz    750 -   1,500Hz
        イナゴ    100 -  15,000Hz    7,000 - 100,000Hz
        イルカ    150 - 100,000Hz      7,000 - 120,000Hz
        コマドリ   250 -  21,000Hz      2,000 -  13,000Hz
        コウモリ  1,000 - 120,000Hz      1,000 - 120,000Hz 
 

 余談ですが、大きな音や騒音を聴いてばかりいると、此の辺りの周波数が聴こえなくなってきます( これを騒音性難聴といいます)。 オクターブ・オージオメータでいえば 4,000Hz の音です。 他の周波数は正常でも、この 4,000Hz だけが落ち込むので、ドイツ式の音名を採って「c5 ディップ dip」と呼ばれています。 

 この「c5 ディップ」、実は本当は最初に聴力低下するのは 4,000Hz ではないのです。 オクターブ・オージオメータでは普通測らない 6,000Hz 、あるいは普通のオクターブ・オージオメータでは測れない 5,000Hz最初に聴こえなくなるのです。 つまり昔から聴力測定にはオクターブ方式が使われているために、たまたま「c5」のディップ dip になっただけなのです。 つまりc5 ディップになるより前に6,000Hz ディップあるいは 5,000Hz ディップになっているのですが、普通のオージオメトリーでは測らない、あるいは測れないのでそれが隠れているだけなのです。 (普通のオクターブ・オージオメータで測る周波数は 125Hz 250Hz 500Hz 1,000Hz 2,000Hz 4,000Hz 8,000Hz です)

騒音性難聴のオージオグラム例

特殊オージオメータによる)

4,000Hz と同程度に 6,000Hz が低下し、それよりもさらに 5,000Hz が顕著に低下しています。

■ 普通のオージオメータで表すと、ほぼ 正常の 2,000Hz の右にやや低下した 4,000Hz があり、その右は正常の 8,000Hz と続くことになります。

■ 実線丸印は右耳、破線×印は左耳の聴力


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