放射線安全取り扱いマニュアル
(第2版)
大阪労災病院
放射線安全委員会 編
大阪労災病院では、診断、治療、血液照射装置などの最先端の放射線機器が整備されており、それに関係する放射線診療従事者(医師、技師、看護婦)の放射線に対する正しい理解に基づく、安全な取り扱いが求められています。本マニュアルはその一助となることを目的に編集されたものです。
1.電離放射線の定義
物質の原子・分子に作用して電離を起こすことができる放射線を電離放射線といいます。
電離とは、電気的に中性の原子に外からエネルギーを与えて、原子を陽イオンと陰イオンとに
分離することをいいます。電離放射線には、原子に衝突して直接電離を起こす荷電をもつ粒子(電子、陽子、重イオン)と、荷電を持たないが物質中で荷電粒子を生じたり、核反応を起こしたりして間接的に電離を起こす間接電離粒子(X線、γ(ガンマ)線、中性子線)があります。なお、電波や赤外線、紫外線などは電離を起こさない放射線(非電離放射線)です。
2.放射能の定義
放射能とは、不安定な原子核が安定な原子核に変わる時(壊変現象)に、放射線を放出する能力またはその強さをいいます。また、このよう性質を持つ元素を含む物質は放射能を有することがあるため放射性物質と呼び、同種の安定な元素と比較して放射性同位元素(ラジオアイソトープ)と呼ばれることがあります。
3.放射線と放射能の違い
放射線は放射線発生装置などの機械を使って発生させたり、不安定な原子核が安定な原子核に変わる時に放出されます。電球にたとえると、電球が放射性物質、電球からでる光が放射線、光を出す能力を放射能ということができます。
放射能、放射線、放射性物質は混同して使われやすく、例えば「ラジウムには放射能がある」という場合、「ラジウムには放射線を出す能力がある」ということであり、「このラジウムの放射能は10ベクレルである」という場合は、放射線を出す能力の大小を表しており、「原子力施設の廃液貯槽からの放射能漏洩」というような場合では、放射能という言葉を放射性物質という言葉の代わりに使われています。ただし、放射能という言葉を放射性物質の代わりに使うのは本来からいうと正しい使いかたではありません。
病院では、X線検査を中心とする診断用X線が多く用いられています。胸腹部撮影、骨撮影、小児撮影、断層撮影等の単純撮影や病室、手術室、ICU等で使われている移動用X線撮影装置で撮影する単純撮影もX線です。その他、血管造影、胃腸透視、CT等の造影検査にもX線が使われています。
放射線治療で用いられる放射線はX線、電子線とγ(ガンマ)線です。X線は診断用と同じ放射線ですが、エネルギーが桁違いに高く強力です。X線と電子線は、リニヤックという医療用直線加速器から照射されます。加速器のなかを電子が加速されてそのまま放出されるのが電子線で、タングステン等の金属にあてるとX線が放出されます。γ(ガンマ)線は、診療用放射線照射装置(ラルス)から照射され、線源としてイリジュウム192という放射性同位元素を使用しています。
核医学診断には患者さまの体内に放射性医薬品を投与し、シンチカメラなどの装置で臓器や組織の形態や機能を検査します。現在もっとも多く用いられている放射性核種はTc?99m(テクネチウム99m)であり、約6時間ごとに強さが半分になっていきます。その他に、ガリウム、タリウム等が使用されます。
1.放射線障害
人体が放射線をうけたときの影響(放射線障害)には、身体的影響と遺伝的影響とに大きくわけられます。身体的影響は放射線をうけた個人だけにあらわれる影響であり、遺伝的影響とは放射線をうけた人の子孫にあらわれる影響のことです。
(1) 身体的影響
全身に放射線をうけたときの身体的影響には、数週間以内に影響のあらわれる 急性効果と、数年から数十年先にあらわれる晩発効果があります。身体的影響のあらわれ方は、うけた放射線の量が同じでも年令、性別、個人差などによって差があり、また、胎児や子供は大人
にくらべて放射線に対して感受性が高いと考えられています。
(2) 遺伝的影響
生殖腺が放射線をうけると、生まれてくる子供に異常があったり、正常に生まれても後の世代に影響をおよぼすことがあります。これらの遺伝的影響は、放射線によって生殖細胞に突然変異がおきて生じるものですが、自然におこる突然変異とあらわれ方も同じなので、非常に区別はむずかしいとされています。
(3) 回復現象
少量の放射線を長時間にわたってうける場合と一度に同じ量の放射線をうける場合とでは、影響は前者の方がはるかに少なくなります。これを線量率効果といいます。これは、細胞や組織には放射線による損傷を修復する能力があるからです。
2.放射線障害と限界線量(しきい値)
放射線の障害には、ある量以上の放射線をうけないとおこらないもの(確定的影響)と、うける線量がゼロでない限り、小さい確率ではあるがおこるもの(確率的影響)とがあります。つまり、前者は限界線量(しきい値)があり、白内障や不妊などで、後者は限界線量(しきい値)がないと考えられるがんや遺伝的影響です。
放射線による人体への影響については、被曝線量が非常に高いレベル(数百mSv(ミリシーベルト)以上)については認められていますが、微量の被曝線量(数mSv以下)では何らかの影響が認められたことはこれまで確認されていません。しかし、放射線防護の立場からは、たとえ確率はごくわずかでも、被曝した線量に比例して障害を生ずる考える方が安全であり、このような仮定にたって放射線防護の対策がとられています。
3.線量限度
放射線を取り扱う人や一般の人の放射線被曝に対して、放射線防護上、被曝線量について一定の制限を設けています。これを線量限度とよび、国際放射線防護委員会(ICRP)から勧告が出されています。わが国でもこの勧告に示された線量限度を2001年4月から採用しています。
勧告で示されている線量限度のレベルでおこると推定されるがん死亡や遺伝的影響の発生頻度は、きわめて小さく、ほかの比較的安全な職業でおこっている様々な致命的リスク(危険度)より低いレベルに設定されています。
但し、この勧告では、自然放射線による被曝と医療行為により直接うける被曝を除外しています。その理由は、自然放射線は、地域的な差もありますし、人為的に制限できる性質のものではないということ。また、医療行為による被曝は、診断や治療をおこなう目的のもので、その個人にとっての医学的利益が大きく一般的な制限値をきめることが困難であるためです。
現在の法令ではICRP1990年勧告を取り入れており、放射線業務従事者について以下の線量限度を定めている。
(1)実効線量限度
1) 平成13年4月1日以後5年ごとに区分した各期間につき100ミリシーベルト
2) 4月1日を始期とする1年間につき50ミリシーベルト
3) 女子(妊娠不能と診断された者、妊娠の意思のない旨を使用者等に書面で申し出た者
及び妊娠中の者を除く)は4月1日、7月1日、10月1日及び1月1日を始期とする
各3月間につき5ミリシーベルト
4) 妊娠中である女子 本人の申出等により使用者等が妊娠の事実を知ったときから
出産までの間につき、内部被曝について1ミリシーベルト
(2)等価線量限度
1) 眼の水晶体については4月1日を始期とする1年間につき150ミリシーベルト
2) 皮膚については4月1日を始期とする1年間につき500ミリシーベルト
3) 妊娠中である女子の腹部表面については妊娠と診断されてから出産までの間2ミリ
シーベルト
1.多いX線検査
医療では放射線が様々な形で利用され、診断や治療に大変な威力を発揮しています。中でもX線検査を中心とする診断のための医療放射線の利用はもっとも頻度が多くなっています。X線検査を受ければ当然被曝するため、X線検査を極端に怖がる人々がいることも事実です。ただし、身の回りにはX線に限らず、様々な自然放射線あるいは人工放射線が存在しており、それらも参考にしながらX線検査による被曝線量の大きさを理解することが大切です。
2.主なX線検査と患者さまの線量
X線検査の場合、X線が入射する皮膚の表面の線量がもっとも線量が多くなります。
X線検査による患者さまの被曝には個人差があり、一般的なX線検査では、皮膚の被ばく線量は、多くても数mSv から数十mSv 程度であり、身体内部の臓器、例えば、赤色骨髄、胃などの線量はさらにこの1/2 以下となります。
これは、放射線を受けた時に影響が発生する最小の線量、すなわち「しきい線量」を大きく下回り、X線検査では、脱毛、白血球の減少や胃腸管障害などの急性放射線影響が生じる可能性がないことがわかります。
一方、がんや遺伝的影響の場合には、しきい線量がないので、X線検査によってがんや遺伝的影響が誘発される可能性がゼロでありません。しかし、ゼロでないと言っても大きな値ではなく仮に、白血病が問題となる赤色骨髄という臓器に 10mSvのX線を1回受けた場合には、被曝後2年から40年までの間に白血病が生じる可能性は 0.005%と見積られます。これは、放射線以外の原因で自然に白血病が発生する可能性が
0.7%であることを考えれば、一人の個人にとってはほとんど問題にならないレベルであると言えます。また、被曝した部位以外の部位に影響が発生しません。すなわち、手のX線検査を受けても白血病の可能性も遺伝的な影響の発生する可能性もなく、また、お腹に赤ちゃんのいるお母さんが妊娠と気付かないで、歯科撮影や胸のX線検査を受けても赤ちゃんへの放射線影響は問題となりません。
3.X線検査のあり方
X線検査の原則は、その検査が本当に必要な患者さまに限定して行うことです。その原則が守られれば、X線検査に伴うがんの発生などの危険性より、はるかに大きな現実の利益をその患者さまにもたらしてくれます。また、胸部X線間接撮影が結核患者さまの早期発見、治療に大きく貢献したように、X線検査は社会全体にも大きな利益をもたらしています。
放射線をむやみに怖がって必要な検査を受けなければ、重篤な病気の早期発見や診断の確定などに支障を来す恐れもあります。X線検査を上手に受けるコツは、検査の目的についてきちんと説明を受け、必要な検査を正しく受けることだと言えます。
1.核医学診断とは
核医学診断には、(1)
患者さまの体内に放射性医薬品(放射性核種を含む薬剤)を投与し、シンチカメラなどの装置で臓器や組織の形態や機能を検査するインビボ核医学検査と(2) 患者から採取した血液や尿などの試料と、放射性核種を含む試薬を混ぜて、その中に含まれるホルモンなどの微量な物質を調べるインビトロ核医学検査の2つがあります。
インビトロ核医学検査では、患者さま自身に放射性医薬品が投与されるわけではないので、患者さまは全く被曝しません。一方、インビボ核医学検査では、体内に投与された放射性医薬品から放出される放射線によって、患者さまの被曝が生じるので被曝が問題となるのはインビボ核医学検査だけです。
2.インビボ核医学検査の特徴
インビボ核医学検査のために患者さまに投与された放射性医薬品は、2つの理由で体内からなくなっていきます。一つは、放射性医薬品に含まれる放射性核種自身が自然に減衰していく性質であり、インビボ核医学検査では減衰が特に早い放射性核種が用いられています。現在もっとも多く用いられている放射性核種はTc-99m(テクネチウム99m)であり、約6時間ごとに強さが半分になっていきます(半減期:放出される放射線の量が半分になる時間)。このように、インビボ核医学検査で用いられる放射性核種は、どれも検査後しばらくすれば体内からなくなってしまいます。もう一つは、代謝による体外への排泄であり体内に投与された放射性医薬品の一部は、体内の臓器や組織に蓄積するが、大部分は尿、汗、呼気、便などの中に排泄されていきます。インビボ核医学検査を受けている患者さまが所定のトイレを利用するように言われるのはこのためです。
3.インビボ核医学検査による患者さまの線量
患者さまが被曝する線量は、放射性医薬品の種類や量、すなわち検査の種類によって異なり患者さまの線量は、多くても10数mSv 程度であり、X線検査による患者さまの被曝線量とほぼ同じと言えます。
このように、インビボ核医学検査によって患者さまは被曝するが、急性の放射線影響のしきい線量を超えることはないので、脱毛、白血球の減少や胃腸管障害などの急性放射線影響が生じることはありません。がんや遺伝的影響については、発生の可能性は全くゼロではないが、一人一人の患者さまが心配しなくて済むようなレベルです。
放射線治療とは、大量のX線やガンマ線などの放射線をがんの病巣に照射し、病巣の破壊または縮小をはかるものであります。がんの種類や照射の方法などによって異なりますが、およそ20Gyから70Gy に及び、X線検査などとは比べものにならない大量の放射線が照射されます。このため、一時的に皮膚が赤くなったり、白血球の減少、下痢、食欲不振などの副作用が生じる場合があります。これを急性放射線障害といいます。放射線治療技術の改善により、がん病巣にできるだけ放射線を集中させることで、これらの副作用を軽減する努力が進んでいます。
1.放射線治療とは
放射線治療とは、がんの病巣に対して大量のX線やガンマ線などの放射線を照射し、大量の放射線による物理的、生物的作用によって病巣の破壊または縮小をはかるものです。
X線検査が人体に直接の影響を与えないわずかな量のX線で身体各部の画像を得るのに対して、放射線治療では、人体組織に直接の影響を及ぼす大量の放射線を用いて、がん細胞を殺し、さらには、がん病巣を破壊することを目的としています。
2.放射線治療のしくみ
放射線治療の方法としては、(1) ライナック(直線加速器)や重粒子線加速装置などを用いて、体の外から大量の放射線を病巣部に照射する方法(体外照射法)、(2)膣のような体腔に放射線源を挿入して、子宮頸部にできたがん病巣に大量の放射線を照射する方法(体腔内照射法)、(3)
舌などのような体の表層部にできたがんの病巣内に針やビーズ状の放射線源を埋め込んで、大量の放射線を照射する方法(密封小線源治療)、(4) ある特定の臓器(甲状腺など)にそれぞれある特定の放射性物質(ヨウ素131
など)が集まる性質を利用して、病巣部に集積した大量の放射性物質から放出される放射線でその病巣部自身を照射する方法(核医学治療)があります。なお、(1)の体外照射法では、皮膚などの正常組織の損傷をできるだけ少なくするために、20から30回に分割して照射を行います。
3.放射線治療の適用
放射線治療は主としてがんの治療に適用されますが、がん以外にも脳にできる血管の奇形の除去や傷の痕にできるケロイドの治療などのために用いられることもあるので、放射線治療が行われるからといって必ずしもがんであるとは限りません。また、放射線治療は手おくれのがんに適用されるという誤解も一部にはありますが、これも間違いです。喉頭がんのように放射線治療だけでも効果のある場合もあり、さらに、集学療法といって放射線治療と外科的治療および化学治療(制がん剤の投与)を組合わせた、効果的ながん治療も行われています。
4.放射線治療の副作用
がん病巣に大量の放射線を照射するとき、どうしても周囲の正常な組織もある程度の量の放射線を受けます。このため、放射線治療を行うとさまざまな副作用が生じる場合があり副作用の程度は、放射線の照射を受けた身体の部位や面積などによって異なります。
副作用には、(1) 急性放射線障害と(2) 晩発性放射線障害の2つがある。急性放射線障害とは、治療中あるいは治療終了後数週間以内に起きる副作用のことで、皮膚が赤くなったり、白血球の減少、下痢、食欲不振などが生じる場合があります。症状が激しく、辛いこともありますが、一時的なものです。
晩発性放射線障害とは、治療が終わってから半年以降に起きる副作用のことで、胸に放射線を照射したときに肺炎が生じたり、子宮がんの治療のあとで直腸炎が生じたりすることがあります。
そのため、放射線治療終了後数年は放射線治療医の診察を受けなければなりません。
現在は、放射線治療技術が進み、がん病巣にできるだけ放射線を集中させて周囲の正常な組織の線量をできるだけ減らすことにより、これらの副作用を軽減できるようになってきています。
放射線の影響は潜伏期間、即ち被曝から臨床症状が出現するまでしばらく期間が存在します。この潜伏期間の長さにより、急性障害と晩発性障害の2つに分けられます。急性障害は被曝後、数週間以内に臨床的症状が出現する影響であり、潜伏期間の長さは影響の種類と線量によって異なりますが、一般的に線量が高いほど潜伏期間は短くなります。
1.急性障害
急性障害は比較的高い線量を被爆したときに数週以内のうちに現れる障害で、代表的なものは、急性放射線症、急性放射線皮膚障害、造血臓器機能不全などです。
(1)急性放射線症
急性放射線症の経過は通常次の4期に大別されます。
第1期:吐き気、嘔吐、脱力感におそわれる。嘔吐は1?2時間後から1?2日間続く。
第2期:次の1週間は、自覚症状はないが、造血障害が著しく進行してきます。
第3期:さらにその後数週間では、放射線障害が全身に拡大し、造血障害、出血傾向、
感染症、主要臓器の萎縮を生じ、重症な場合には死亡することになります。
第4期:回復期に当たりますが、しかし慢性的障害を残すことが多いようです。
急性放射線症は受けた線量により主として現れる症状は異なり、数Gy以下の被曝の場合には造血臓器の症状が主症状として現れ、10Gy程度の被曝の場合には消化管の症状が現れ、さらに線量が高くなると中枢神経系の症状が主となります。被曝線量が高いほど急性放射線症の症状が出現するまでの潜伏期間は短くなります。
造血系の症状としては、骨髄幹細胞数の減少による、血球減少症、出血、感染があり、消化管系の症状としては、腸の腺窩細胞の死により絨毛上皮の新生が絶たれ、脱水症状、電解質の平衡状態の崩れ、細菌感染症などが出現します。また中枢神経系の症状としては、脳血管の透過性の亢進に伴う脳浮腫に関連したけいれん、嗜眠、運動失調などの症状が出現します。
(2)局部被曝の急性影響
局部被曝の場合には被曝した組織に障害が発生しますが、その程度は被曝した組織の量と線量に依存します。皮膚の場合、被曝線量が増すに従い、脱毛、炎症や紅斑、水泡、潰瘍等の症状を生じ、爪も同様で、被曝後肥厚、脱落し、潰瘍に進行します。受けた線量が低い場合には、現れる症状は一過性のものでありますが、線量が高ければ、慢性化することになります。
(3)急性障害を修飾する因子
障害評価上から見れば、急性障害の発生する最低線量はどのくらいかということが問題になります。急性障害の発現には、種々の要因が関与していて複雑ではあるけれども、明瞭に急性障害が現れるのは0.5Gy以上です。
急性障害の発生線量
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線量(Sv) |
全身的症状 |
局所的症状 |
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0.25以下 |
臨床症状なし |
臨床症状なし |
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0.5 |
白血球の一時的減少 |
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1.0 |
吐き気・倦怠感 |
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3.0 |
半数が死亡する |
脱毛 |
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5.0 |
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皮膚:赤くなる |
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7.0 |
全員が死亡する |
生殖腺:永久不妊 |
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8.5 |
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皮膚:ただれ、水ぶくれ |
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10以上 |
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皮膚:潰瘍ができる |
2.放射線の晩発性影響
放射線影響には潜伏期間、即ち放射線被曝から臨床症状としての影響が出現するまでにある期間が存在します。この潜伏期間が数ヶ月以上のものを晩発性影響と呼びます。晩発性影響は、被曝後生き残った細胞内に修復不可能な“傷”(突然変異)が残ることによっておこるとされています。晩発性影響の代表的なものとしてがんの誘発、白内障等が上げられ、放射線誘発性がんの潜伏期間は特に長く、数年(白血病)から数十年におよぶことになります。
(1)晩発性影響とは
一度に多量の放射線をあびると、照射後数時間ないし数日の潜伏期間を経て、急性放射線症等の症状が現われます。これらの急性症状が回復しても、年が経つにつれていろいろの障害が現われることがあります。また少量の線量を長期間あびると、長い年月の後に障害が現われることがあり、このように数ヶ月以上の潜伏期間を持つ影響を総称して晩発性影響といいます。晩発性影響には白血病、皮膚がんなどの悪性腫瘍の誘発、白内障などが知られています。
(2)がんの誘発
全身被曝によって誘発される固形腫瘍の主な部位は、乳房(女性)、甲状腺、肺および消化器官であり、造血系の幹細胞(骨髄芽球)が“がん化”をすれば白血病となります。組織や器官の放射線感受性はまちまちであり、そのため発がんの線量?効果関係はがんの種類や発生部位によって大きく変わります。
照射後腫瘍が出現するまでの潜伏期間は相当長いのが普通であり、ヒトでは白血病の潜伏期間が一番短いのです。広島の原爆の例では、被爆の3年目から15年目までの被爆集団の白血病出現率は対照群より有意に高かったが、その後では両者の差はずっと縮まっています。一方固形腫瘍の潜伏期間は長く、被曝後10年以内に発生することは稀で、被曝後20年あるいはそれ以上にわたって出現し続けています。
(3)白内障
放射線をうけた動物およびヒトの水晶体に混濁(白内障)が起こることがあり、これは水晶体上皮細胞が被曝により損傷をうけ、それが水晶体繊維の分裂を引き起こすことによると考えられています。
放射線白内障の重篤度や潜伏期間の長さ、進行のはやさは被曝線量に依存し、X線やγ線の1回照射によって白内障が発生する最低線量は2Gyですが、照射が分割されると最低線量は高くなり、3-14週の分割では4Gy、15週以上では 5.5Gyです。しかし11.5Gy以上照射すると、照射法の時間的分布に関係なく白内障は必発し、比較的低線量の被曝では、混濁がある程度以上進行しない停止性のものが多く、高線量では進行性のものが増加します。
放射線被曝による影響の分類
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放射線影響 |
身体的影響 |
急性影響 |
皮膚の紅斑 脱毛 白血球減少 不妊 など |
確定的影響 |
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晩発性影響 |
白内障 胎児の影響 など |
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白血病 がん など |
確率的影響 |
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遺伝的影響 |
代謝異常 軟骨異常 など |
|||
1.被曝線量の単位
被曝線量はどのように測ればよいのでしょうか。被曝線量を測る方法として最初に考え出されたのが「吸収線量」を測ることです。
吸収線量は、物質1キログラム当たり放射線のエネルギーをどのくらい吸収したか、によって決められています。物質1キログラム当たりに吸収された放射線のエネルギーが大きければ大きいほど、その物質の受ける放射線の影響は大きくなりますから、被曝線量を測定する方法として吸収線量が最初に考え出されたのは至極当然のことだといわなければなりません。吸収線量の単位はグレイ、単位記号はGy(グレイ)で、物質1キログラム当たり1ジュールの放射線のエネルギーを吸収したときの吸収線量を1グレイといいます。
1(グレイ)=1(ジュール/キログラム)
吸収線量はどのような物質に対しても適用できる便利な被曝線量の量ですが、人体に対する放射線のいろいろな影響を考える場合、吸収線量では不十分であることがわかっています。たとえば、吸収線量が同じ1Gyであっても、中性子という放射線で1Gy被曝した場合とγ(ガンマ)線で1Gy被曝した場合とでは、人体が放射線によって受けるダメージは中性子線の方がγ線よりずっと大きいのです。
そこで、たとえ同一の吸収線量であっても、放射線の種類やエネルギーの違いなどによって人体の受ける放射線の影響の程度が異なることを考慮して、被曝線量を測る方法として新たに考え出されたのが「線量当量」です。線量当量は、放射線の種類とエネルギーによって決まる「線質係数」という補正係数と、その他の修正係数とを、吸収線量にかけ算して求めたものです。もっとも、その他の修正係数は必ずしも十分によくわかっているわけではないので、現在は、この値を1.0とすることにしています。
(線量当量)=(吸収線量)×(線質係数)×(その他の修正係数)
(線量当量)=(吸収線量)×(線質係数)×1.0
したがって、線量当量の値が同じならば、どのような種類の放射線であろうと、またどのようなエネルギーの放射線であろうと、人体の受ける放射線の影響は同じであると見なすことができます。線量当量の単位はシーベルト、単位記号はSvです。
(シーベルト)=(グレイ)×(線質係数)×1.0
なお、吸収線量の旧単位はradラド、線量当量の旧単位はremレムです。現単位のGyやSvが使われるようになったのはそんなに古いことではないので、少し古い論文や本などにはきっと旧単位が使われていることと思います。旧単位を現単位に換算するときは、次のようになります。
1(ラド)=0.01(グレイ)
1(レム)=0.01(シーベルト)
いずれにしても、放射線に被曝した人がどのような影響を受けるかということを測るのは線量当量です。
2.被曝線量の計測
施設における漏洩、散乱、透過等の外部放射線源に起因する外部被曝のモニタリングでは、各種の個人線量計を従事者に着用させ、被曝線量を測定します。個人線量計は、作業環境における放射線の種類とエネルギーを考慮して選択し、また、個人線量計は作業内容を考慮して、適切な場所に必要個数を着用します。
外部被曝モニタリングという場合、広義にはサ?ベイメ?タ等を用いた区域サ?ベイも含まれますが、通常は個人線量計等の放射線測定用具を用いた個人被曝線量測定を指すことが多いのです。区域サ?ベイ(場の線量測定)は、作業環境の放射線場の状況を把握し不要な被曝を未然に防止するという点で重要な意味を持ちますが、個人被曝線量デ?タとして利用されることが少ないようです。
個人線量計の着用位置は、体幹部表面のもっとも多く被曝する部分を代表する位置とされますが、通常、男性は胸部、女性は腹部です。X線装置等を利用した作業などで含鉛防護衣(プロテクタ)等を着用する場合に、体幹部上で防護衣による被覆部分と露出部分における線量値が明らかに異なることが予想される際(不均等被曝)には、防護衣の内側と外側(主に頭頚部の被曝を代表する位置)の2ヶ所ないしは3ヶ所にそれぞれ線量計を付けます。但し、使用可能な線量計が1個だけの場合には、安全側の評価となるよう防護衣の外側に付けます。一般に、ほとんどの放射線作業では胸部または腹部に1個の線量計を着用すれば十分です。
個人外部被曝モニタリングに用いられる個人線量計には種々のものがありますが、大別すると次のような4種に分類できます。
1)フィルムバッジ
2)熱ルミネッセンス線量計
3)蛍光ガラス線量計
4)直読式線量計(ポケットチェンバー)
上記のうち直読式線量計は、使用者自身が直接線量を読み取れるようになっている線量計で、従来のペン型の電離箱式ポケット線量計のほか、GM管や半導体検出器を利用したタイプもあり、また一定の線量や線量率になると警報音を発するものもあります。直読式線量計は、放射線作業者自身の自己被曝管理に利用できるという利点がありますが、作業毎あるいは入域毎の被曝管理や出入り管理、また警報目的として利用されるのが一般的であり、正式の記録としては採用されません。各使用者の正式の被曝デ?タ用として利用される線量計は基本線量計といい、1ヶ月ないし3ヶ月間連続使用した後測定され、記録されます。このため基本線量計としては長期安定性が必要とされ、乾電池等の電源を必要としない上記4種のうち上位3種の線量計が用いられています。
事業者等は、放射線医療従事者である管理区域に立ち入る者および放射性物質あるいは放射線発生装置の取扱業務に従事する者に対して、以下の基準にしたがって教育訓練を行わなければなりません。また、事業所内の上記以外の者(事務担当者など)に対しても、立ち入ると考えられる放射線施設に関して、放射線障害の発生を防止するために必要な教育訓練を行うことになっています。ただし、十分な知識および技能を有していると認められる者に対しては、下記
1)、2)についての教育訓練の1部または全部を省略出来ます。
1.教育訓練の時期
(1)管理区域に立入るものに対しては、管理区域に初めて立入る前および立入った後では、1年を超えない期間毎に行う。
(2)取扱等の業務に従事する者に対しては、取扱等の業務を開始する前および開始後では、1年を超えない期間毎に行う。
2.教育訓練の項目
(1)放射線の人体に与える影響
(2)放射性同位元素等または放射線発生装置の安全取り扱い
(3)放射性同位元素および放射線発生装置による放射線障害の防止に関する法令
(4)法律に基づき事業者等が作成し、国の認可を受けた放射線障害予防規定
3.教育訓練の時間数
初めて管理区域に立ち入る前または取り扱い等業務を開始する前に行わなければならない教育および訓練の時間数の下限を下表に示します。通常の放射線医療従事者は(1)と(4)、ラルスやリニアックなどの放射線治療装置を扱う管理区域に立ち入る放射線業務従事者は(1)?(4)の全てを受けることが義務づけられています。
項 目 時間数
(1)放射線の人体に与える影響 30分
(2)放射性同位元素等または放射線発生装置の安全取扱 4時間
(3)放射性同位元素および放射線発生装置による放射線障害の 1時間
防止に関する法令
(4)放射線障害予防規定 30分
4)健康診断について
放射線防護上での健康診断は、特殊健康診断を云い、放射線医療従事者に被ばく歴の調査、血液、眼及び皮膚の検査を行うよう定めています(電離放射線障害防止規則第56条、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律第23条、同施行規則第22条)。
法令では、健康診断項目のほか、実施された健康診断の結果に関する記録の保存(永久保存)、個人への通知、官庁への報告(電離放射線障害防止規則第58条)及び個人に対する措置なども定められています。
健康診断のうち問診については全員に対して毎年行います。しかし、検査叉は検診については、医師が必要と認める場合に限られます。内容としては、血液では末しょう血液中の血色素量叉はヘマトクリット値、赤血球数、白血球数及び白血球百分率、そのほか眼及び皮膚の検査を行うよう定められています。
放射線防護の基本的な考え方として、国際放射線防護委員会(ICRP)では、1977年に被曝線量について合理的に達成できるかぎり低く保つべきであると勧告しています。
これについては、不必要な被曝は、たとえ線量限度内であっても、可能な限り低くなるよう配慮されています。
一般的にいって、放射線の被曝を問題にする場合には、体外にある放射線源からの放射線による体外被曝と、体内にとりこまれた放射性物質からでる放射線による体内被曝との両方を、どのように防ぐか考える必要があります。
1.放射線防護の目標
放射線防護は、種々の立場からそれぞれ異なった目標をもって行われているが、国際放射線防護委員会ではその目標を以下のように述べています。即ち、人間の被曝を伴う諸活動に対し、適切に安全な諸条件を作り上げ維持することであり、具体的には確定的な影響を防止し、また確率的影響の確率を容認できると思われるレベルにまで制限すること、また放射線被曝を伴う行為が確実に正当とされるようにすることであります。
放射線の影響から人体及び環境を護るという放射線防護は、種々の目標を持って行われています。放射線防護に関し長い歴史と高い権威を持っている国際放射線防護委員会の見解を中心に、最近の放射線防護関係者によって受け入れられていると考えられる放射線防護の目標は以下のとおりであります。
放射線の人体への影響は多様な形で現れ、それらはいろいろに分類できます。即ち、被曝した個人本人に現れる身体的影響と被曝した個人の子孫に現れる遺伝的影響とに分けることが出来るが、もう一つの重要な分類は、その影響の起こる確率がしきい値のない線量の関数と考えられる確率的影響としきい値があり、その影響の重篤度が線量とともに変わる確定的影響とに分けることであります。放射線防護に関係のある線量範囲では、発癌は確率的影響と考えられ、発癌以外の身体的影響は確定的影響と考えられます。放射線防護の目的は、確定的な有害な影響の発生を防止し、また確率的影響の発生確率を社会が一般に容認できるとしているレベルにまで制限することであり、さらに放射線被曝を伴う行為が確実に正当とされるようにすることです。
確定的影響の防止は被曝を確定的影響の発生のしきい値に達しないように制限すればよく、確率的影響の制限は、適切な線量限度を設けた上で、被曝を経済的及び社会的要因を考慮に入れながら合理的に達成できる限り低く保つことによって達成できます。このため、放射線防護のための線量限度を設定して実行することとしていますが、確率的影響のあることを認識して、国際放射線防護委員会は、線量限度に留まらずに以下のような線量制限体系を提言しています。即ち、
1 いかなる行為もその導入が正味でプラスの利益を生むものでなければならない。(行為の正当化)
2 すべての被曝は、経済的及び社会的な要因を考慮に入れながら、合理的に達成できる限り低く保たなければならない。(防護の最適化)
3 個人に対する線量当量は、委員会がそれぞれの状況に応じて勧告する限度を越えてはならない。(線量の制限)
この3点が現在の放射線防護の目標を最も端的に表しているといえます。このように、放射線防護の主目標は、人体の被曝を伴う諸活動に対し、適切に安全な諸条件を作り上げ維持することにあります。
2.放射線防護の3原則
外部被曝線量低減のための放射線防護の3原則は、時間(time)・しゃへい(shield)・距離(distance)の3つで、「しゃへい」「距離」「時間」の順に検討されます。
「時間」の原則は、作業者が放射線に曝されている時間を短縮することにより被曝線量を低減することです。
「しゃへい」の原則は、放射線源と作業者の中間に遮蔽物を設置することにより被曝線量を低減することです。
「距離」の原則は、放射線源と作業者との距離を離すことにより、作業時における空間線量率を低減することです。
なお、この原則では内部被曝線量低減は範囲外です。
( 放射線防護の3原則の具体例 )
「時間」の原則は、具体的には放射線作業量・手順を合理的に設計することにより作業時間の短縮を試みること(無駄な被曝の低減)や、作業者の熟練度を向上させること(余計な被曝の低減)などであります。
「しゃへい」の原則は、具体的には放射線源と作業者との間に遮蔽物(コンクリート壁、鉄壁等)を設置することにより、作業者の受ける被曝線量を低減することであり、広義には、作業者(放射線技師等)が着用する前掛け型プロテクタ等も「しゃへい」に含まれます。
「距離」の原則は、γ線(X線)の空間線量率が「放射線源からの距離の自乗に反比例する」ことにより、作業者と放射線源とを離すことで作業場所における空間線量率を低減することであります。